訃報 眉村卓

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SF作家、眉村卓の訃報。ご冥福をお祈りいたします。

自分はSF読者の端くれではありますが、なんでSF読みだしたかといえば学校の図書館とか市の移動図書館とかで借りた鶴書房のSFベストセラーズをはじめとした、いろんな出版社の少年少女向けのSFシリーズ本でした。

自分にとっては、夕方5時からのロボットアニメを楽しむのとまったく同じノリでわくわくするものをひたすら探して読み漁っただけで、それがたまたまSFというジャンルだったのでしょう。

そんな中、図書館でめぼしい本も無くなって、おこずかい握りしめて初めて買った文庫本が眉村卓の短編集だったと思います。選んだのは分厚くて色々な話がたくさん読めそうだったから、読みやすそうだったから、ですね。小学4年か5年だった思います。あれ、ウェルズの「タイムマシン」とどっちが先だったかな。とにかく自分のお金で買った初めてか2番目かの文庫本です。

なぞの転校生」と同じ作者だと知ったのはだいぶ後になってから。さらに言えば何度かTV放映された「ねらわれた学園」(1981年の角川映画)の原作者と知ったのも。

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そのほか「とらえられたスクールバス」も買ったんですが、上巻だけで長らく止まっているうちにOVA化で「時空の旅人」に改題されて再出版されたり、アニメ誌で大体のストーリー展開を知ってしまったのもあって、なんか続きをそろえる事に抵抗感があって長らく未読。結局「時空の旅人」の方で完読したのは結婚したうちの奥さんが買って持っていたからというオチでした。

作品はあっさりとした文体という印象ですが、日常感がある中で登場人物には対応のしようもない状況が淡々とつづられるその文体の奥に非情さというか恐怖を感じたもので、小中学生の頃の自分にとって眉村卓はちょっと恐い物語でしたね。

今の日本は、昔に比べればSFの敷居が下がっているというか、普通にタイムマシンによるタイムパラドクスがテレビのドラマに出てきても皆受け入れてしまう時代になっていますが、眉村卓らのSF先駆者たちの作品が果たしてきた役割が大きいのではないかと思います。合掌。