永久機関は当然無理ですが

さて、だいぶ前に該当発明はネットで紹介されていたのを見かけたけど、また記事を見つけたのでコメントしておく。
原発不要?永久機関ついに完成! - NAVER まとめ
http://matome.naver.jp/odai/2130917890982812901
において、簡単に原理が紹介されていますが、エネルギーを取り出すには無駄が多すぎるので簡単に説明しておきます。

ここで阿久津さんはパチンコ玉を中に入れた卓球に使うピンポン球を取り出した。重さは約23グラム。水に入れると、当然、浮力で水面に浮かぶ。阿久津さんはおもむろに落下管の歯車の上にある挿入口から、ピンポン球を20個、次々と投入した。

落下した球は歯車を回して箱に落ちる。箱に取り付けた誘導板の働きで、球はダイレクトに上昇管に入った後、そのまま浮力で上にあがっていく。4つの逆止弁を経て球は水面にたまっていく。すると、球は上にたまった球を下から押し出していく。押し出された球は、そのまま落下管に入り、2つの弁を経て歯車に衝突、歯車を回して再び箱に入る。入った球はまた上昇管に吸い込まれ、上がっていく…。

てな感じで簡単に原理が紹介されているんだけど、もちろん無からエネルギーを取り出すような永久機関は作成不可能です。何らかの形で効率よく自然エネルギーを取り出すことは可能ですが、どこからエネルギーを取り出しているのか考えてみると、この装置の変なところがすぐ分かります。

この装置はボールを浮力で上げている、ということはここで位置エネルギーをボールに蓄積しているわけですね。さて長い筒の底の水の圧力は非常に高い。浮力とは水の圧力差によって発生するので、ボールをこの圧力に逆らって水に押し込めばそりゃボールは浮き上がってきます。この水の圧力に逆らってボールを水中に押し込む操作こそが、ボールにエネルギーを与える行為ということになります。

で、この装置は弁をこまめに使って水を排出することで、一見楽に操作できるようにしているだけですね。

当然、弁の開け閉めのためにもエネルギーは必要だし、無くなった水は補充のために高い位置から汲み入れなくてはいけないので、水を高い位置に上げるにはエネルギーが必要。つまり、排水のたびに位置エネルギーを一部捨てているんです。

というわけで、これは水力発電の一種でしょうね。大規模になるほど、従来のタービン発電機の方が効率が良くなるのは当たり前でしょう。
超小型の設備ならば、直接水車を水で回すよりもエネルギー効率が良くなる可能性はあるけど、ううむ、弁の開閉にモーター使って蓄電池載せて・・・と考えるほど、実用性には疑問がありまくりです。

他には、一種の揚水発電(余剰電力を使って水を汲み上げて、水の位置エネルギーとして電力を保存する)の媒体として中空ボールを使えるかもしれないとも思ったけど、やっぱりボールのメンテナンスコストを考えると普通の水をそのまま使う方が圧倒的に楽かな。

なお特許については、永久機関と主張する文面だと即審査で撥ねられるけれど、なんらかの方法で外部からのエネルギーを変換する装置ならば、たとえ効率が非常に悪くても問題ないので、特許取得できているからと言ってその装置が実用的に使えるとは限らない点に注意。