狼の山

今現在、中華の国は南通市に出張中であり、その仕事の内容はじつは新規採用者の教育です。と言っても自分はもちろん教育は専門外のしがないイチ技術者であるわけで、何を教えりゃいいんだと試行錯誤しながら毎日6時間強、2週間に渡りぶっ続けで授業っぽいことをでっち上げているわけですな。
それでも、将来自分のチームの一員として働いてもらうことを想定してなるべく身になる訓練をしようと、過去に自分が受けた研修などの内容を思い出しつつ、他の現地日本人スタッフ達から聞いた「中国人って・・・」ってな愚痴を参考にそれら中国人特有の問題点を少しでもカバー出来るように、チーム作業訓練の真似事をしたり、わざと熱く「品質って大事なんだよ」とか延々と語って時間稼ぎをしてみたり、たまには息抜きに「日本ってこんな国だよ」って教えてあげながら時間稼ぎしたり・・・とにかくずっと喋り続けながらどのように時間稼ぎしようかと苦しんでいる毎日です。
それでも間に通訳はさんでいるのは助かります。通訳が話している間に次のしゃべる内容を考えていくという泥縄状態ですが、普通にしゃべるとこうはいかないよなぁ。学校の先生って大変だなぁとつくづく思います。

それでも何とか先月分も含めて計3週の教育が終わり、自分のチームに所属予定の9名に絞ったこともあって自分も相手らも少しづつ人となりが解ってきたような感じでした。そうしたら昨日、生徒側から「土曜日は暇ですか?」と質問が。そりゃ土曜日は基本ホテルにこもりっきりで用事ってものはありませんが、何かと思えば「皆で観光に行きませんか」とのお誘い。

自分は基本は人付き合いに関してはかなり内向きで億劫がりで、本心を言えばあまり乗り気ではなかったのですが、断る理由も無かったので誘われることにしました。

朝7時半からメンバーの車のお迎えで着いた先は南通市の狼山という観光地、らしい。通訳も一緒に来てくれたので、コミュニケーション上は困ることはありませんでした。

郊外、ってほどでもない、街の中心部にほど近いところにある小高い丘。どうも昔は城郭や寺があったところらしく、登ると次々と仏教系寺院が現れます。それぞれの寺院には様々な菩薩像が立ち並び、これでもかってぐらいそれぞれに賽銭箱が置かれていて、皆どこまでありがたがっているのかわかりませんが普通にお参りしています。少なくとも日本に比べると、中国人にとって寺院詣ではまだまだずっと身近な事のようですね。

日本でもよくある、観光地そばの駐車場はお土産というかここではお供えを行う線香(といっても日本のにくらべると巨大なものですが)を買わないと置けないというシステム。

そのほかにも、お参りの後に必ず通らなくてはならないお土産コーナー、ちょっと馴れ馴れしい呼び込みのおばちゃん、なぜ必要かわからないけど売っている剣のおもちゃ(木刀ではなかったけど)などなど、日本の有名観光地で生まれ育った自分にとっては、なんで中国のここまで来て同じような観光地システムに遭遇するのかと可笑しくなりました。こういうのってどこも一緒なのね。

地元の人曰く、有名な観光地で子供のころは何度も来ていたけれど大人になってからはあまり来ないねぇ、ってぐらいの所らしいです。自分は、父母が寺社好きで子供のころから観光と言えば地元の県の寺社類を回っていた体験からそれほど違和感は無く、またそれなりに日本での菩薩の名前とか由来とか知っていますために日本の菩薩との共通点とか違いとかがおもしろく、色々と楽しむことができました。

有名な僧の絵も飾ってあったりしましたが、達磨太師とか鑑真とか、むしろ自分の方が彼らに詳しく説明することができました。また、閻魔像かと思ったら関羽像だったり。実在の人物で神様にまで持ち上げられたって聞いていたけど本当だったんだ。「蒼天航路」の関羽のビジュアルはこの像が元だなと納得。
中国の歴史にも詳しいんですね、とか言われ自分の株が少し上がりましたが、実は学研のひみつシリーズとか、横山三国志とかが元ネタだとは秘密です。マンガ万歳。

山の一番上では揚子江がよく見えました。霞がかって対岸が見えないのはいつものことですが、一見するとほんとに海ですね。さすが世界10大大河。

下山して街中で食事して、その後は市内の繁華街を案内されました。
が、だいぶみんな疲れてきた様子。みんな大丈夫?と聞いても「大丈夫です、次はどこに行きたいですか?」の繰り返し。どうも中国のもてなし方として、ゲストにどこまでも合わせるってのがあるようですな。立場的にも私が一番年長者だったし上司だったしで、きっと別の意見を言いにくい状況だったんだろうな、と後になって気付きました。自分は長距離を歩くことには比較的耐性があるので、なかなか気づきませんでした。迂闊だった>自分。

自分がもう帰ろうかと言い出さないとこのまま夕食までぞろぞろ一緒に、となりそうな雰囲気になってきたので、私から解散宣言。そうしたら皆さっさと帰っていきましたよ。ちょっと悪いことしたなぁ。これも一種の空気読め系だけど異文化同士って難しい。

最後は車を持っていた人に、ホテルまで送ってもらいました。言葉こそ理解できませんが、皆の性格とか、誰と誰が仲がいいのか悪いのか、ってのが結構見えてきたのは収穫でした。また、基本中国人って人は良いんだなあってのを再度実感しました。ただ現実主義でドライな考えを行うところがあるので、日本人にとっては急に手のひらを返されるって感じになるんでしょうね。

ま、こんな感じでなかなか得にくい体験ができました。ほんとにありがたいことです。あと一週間、がんばろう。

P.S.
狼山の詳しい説明を探していたら、ブログの体験記がありました。写真も多くポイント抑えていましたので、こちらも参考に。
モンリーの上海奮闘記