福島原発事故独立検証委員会

先日購入した、表題の本について、ようやく読了。

福島原発事故独立検証委員会 調査・検証報告書

福島原発事故独立検証委員会 調査・検証報告書

最近は、たんたんと事実を記録し列挙したカタログとかリファレンスマニュアルとか技術論文とかの方が、著者の思想があまり濃く前面に出ていないので好ましい。
その「事実」の取捨選択の部分で思想が入ってくるとはいえ、今自分が欲しいのは自分が考えて納得するための資料であり、いくつかの資料をつき合わせて初めて事実の細部は見えてくるものだから。
で、まさに技術論文の体で書かれている本書は、今の自分には非常に心地よかった。

で、事故発生当時、いかに危機的な状況にあったかが改めて実感させられた。
管政権の対応に満足していたとは言いがたいが、同様の状況に置かれた時にはたしてどれだけの人があれ以上の対応ができたかは疑問に思う。誰しも皆なんらかの専門性を持っていると思うが、政治は政治家なり政治屋なりが専門なのだし、専門外がとやかく言っても専門のものには適わないし、不満はあれどもそれなりに最適化された状態になっているとも思う。
だが惜しむらくは、政権の担当者はいずれも危機対応の専門家ではなかったのだろう。そして事態に対応できる技術屋は政治能力が決して高くないので、うまく政治家を通じてリソースを集めることができなかったのだ。
本当は政治家が技術屋にリソースを与えるように能動的に動いて、対処自体の判断は任せるべきだったのにそれを逆にしてしまったから、最初はうまく事が運ばなかったのだろう。
それでも少しずつ改善していった経緯もよく理解できたし一人一人は精一杯頑張っているんだ。それにしても当事者の東電の組織としての対応能力の低さには残念に思うが(だからこそ総理が直接口を出す羽目に陥ったともいえる)。

危機にあたってはいかに情報をうまく流すか、人や物を集めそれを適切に配分するか、適切な権限委譲を行うか、がアクシデントに対するマネージメントの肝なんだよなあ。そんなの当たり前のこととは思うけど、実際にそれを行うことがいかに難しいか、逆に現場の当事者として助けが本当に欲しいときになかなか助けてもらえない辛さが製造部の中間管理職やっている自分には実体験として有る。
自分はどちらかといえば乱世タイプのようで、トラブル対処の方がテンションもあがるし動きやすくもあるのだが、危機対応管理能力が高いかといえば決してそうでは無いので、いつでも想定外の事態に向き合えるよう準備だけはしておきたいものだ。

というわけで、おすすめの1冊。