お盆

今年も盆の時期がやってきた。
盆には,あの世へ行った死者がこの世に戻ってくると言われている。
それにしても何故戻ってくる事ができるのだろう?
また,わざわざこの時期限定ということは,普段は戻りたくてもそう簡単には戻れないと予想される。

私は漠然と『あの世とこの世を繋ぐ次元間回廊のようなものがこの時期に広くなって渡り安くなるんだろうな』と考えていた。

ところが,である。私の実家では毎年13日にお墓まで《お迎え》に行き,15日に《送り》に行っていたが,そこから遠く離れた今住んでいる地域では《お迎え》は12日である。地方によって,さらにはもっとローカルな地区によってさえ,この日付は微妙に異なる。
それどころか関東の一部では,新暦で7月に盆を行うところさえある。
これでは,先程の『次元回廊』理論だと迎えに来てくれなくて路頭に迷うご先祖が地方によっていっぱい発生するではないか!

いやいや,『次元回廊』は地方ごとで太くなる時期がわずかずつ異なるのかもしれない。
それにしても新盆の地域だけ約一カ月ずれるものなのか?新盆の地方でご先祖の祟りが多いという話も聞かないので,ちゃんとご先祖は連れ帰えられているに違いなく,つまり帰還は7月半ばに行われていること確実だ。(もちろん,本当は戻ってきていないという場合も考えられるが,今回はその点については言及しない。)

以上から,盆になるとご先祖が戻ってくることができるのは自然現象には由来しないと結論できる。
言い換えれば,戻ってくるタイミングはご先祖さまかまたはそれを迎え入れる我々のどちらかの都合で決定しているのであるから,何もお盆の時期にみなで大挙してあの世もこの世も押しかけなくてもいいのではないか。しかしまあ次元回廊もさぞ込み合うことだろうになあ,と余計なお世話を考えてしまう次第である。

また,そうなるとお盆の時期に戻ってくるのは単に「みんながしているから」というそれだけの理由になる。道理で時期を選ばず幽霊が出現できるわけである。とはいえ夏場に幽霊が多いのは,怨霊といえどもついつい世間の慣習に従ってしまうということであろうか。